2006年02月03日

ファーストプレゼント[2]

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。












[2]
で、今日はその2月5日なんだが。

なんなんだ。
なんでなんだ。

おれは賭博場を出たところでしばし立ち尽くしていた。

なんでこんな時に限って、いつもはかすりもしねえ賭け事に勝っちまうんだよ。

ん? 何が「こんな時」なんだ? 別にこんな時も何もないよな。
うん、喜ばしいことだ。
明日これを元金にもっと増やしてもいいしな。
なんなら、ずっと欲しかったパチンコ強化グッズ買っちまうって手もあるか。

おれはそう考え、とりあえず町の中心に向かった。


服を売っている店の前を通る。
服なんてサイズわかんなきゃ話になんねえしなぁ。

アクセサリーを売っている店では数人の女が品定めしているのが見える。
あんな店、まず店に入るのがありえねえ。
質屋だったら入れるけどな。質屋のおっさんには顔割れてっからなぁ。


……って、おれは何考えてるんだよ!
おれが行くのは道具屋だろ、道具屋!
頭をぶるぶると振った後、ふと右を見ると、そこは文房具屋だった。

そういやあいつ、この間ちびたエンピツで何やら一生懸命書いてたな。

そう考えながら気づくと、店の中に入っていた。
シルバーリーブ老舗の文房具屋らしく、ペンコーナーは思った以上に色々なものがならんでいた。竜の木彫りがされている年代ものから、頭の部分にスライムのキャラクターがついたもの、宝石が埋め込まれている高価なものまで。

……で? おれは何をしようってんだ?
大体、あいつの好みなんて知らねえし、もしかしたら好きでチビたエンピツ使ってるのかもしれねえし。

おれがペンコーナーで眉間にしわを寄せて立っていると、店番をしていたおばさんに鋭い声をかけられた。
「あんたその格好は盗賊だね? まさかうちを狙ってるんじゃないだろうね?」
田舎になればなる程、この手の偏見は多い。
「はん、盗賊だからって、なんでも盗むと思うなよ。おれらが盗むのは、もっと豪華で高尚なお宝で、こんなペンやらノートやら盗んだって何にもなんねえよ」
おばさんは尚も目を細めて聞いてくる。
「ふぅん。じゃあ、この店には何しに来たんだい?」
何しに?
おれは勢いづいて言った。
「そりゃ、買い物に来たに決まってんじゃん。他に何があるっての? おばちゃんよ」
その勢いに押されて、ようやくおばさんも普通の態度に戻ったようだった。
「あぁ、そりゃ悪かったね。ペンが欲しいのかい? 自分用? それともプレゼント?」

それは、その、なんだ。

「……自分用」
もう引き返せない状況になっているとはわかっていても、あがいてみた結果がこれだった。
そこからはおばさんの言われるがまま。
一番お勧めという、真っ黒でごつい万年筆を買ってしまった。
今日の持ち金全部出すくらいの値段で。

いやいや、これでいいんだ。自分で言ったじゃないか。
恋人でもない女にプレゼントする必要なんかないんだって。
おれは万年筆が欲しかったんだ。
そうだ、そうだ。


そう言い聞かせながらそのままみすず旅館に戻ると、クレイとキットンがちょうどパステルにプレゼントを渡したところのようだった。
二人が渡したのはタオルだった。
本当に大したもの買えてないな……という突っ込みはさすがにその場では抑えておいたが、当のあいつはかなり喜んでいるようだった。

そのパステルと目が合う。
おれはにやっと笑った。
「言っとくけど、おれはなんもねえぞ」
「別にそんなつもりないもん」
ぷっと頬をふくらました後、クレイとキットンの方へ向かいなおして、満面の笑顔でお礼をしていた。

タオルごときであんなに喜ぶんだったら、おれなんかタオル100枚ぐらい買えたぞ。
って、まぁ、関係ないけどな、おれには。

[3]に続く


posted by うみ at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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