2006年03月28日

[SS]一番乗りの行方[2]

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。














[2]

は?

「オレ、なるべく早く頑張って盗賊になって、パステルに『トラップなんかよりオレの方が使えるからオレを仲間に入れて』って言うのが目標なんだ! だから、トラップにはその前に堂々と『おまえよりすごい盗賊になってやる!』って言うんだ!」
ガキは、既に盗賊になっているのかと思うくらい自信がみなぎっている。
おれは脱力感を味わいながらも、なんだかふつふつと笑いがこみ上げてきた。
パステルの書いた文章で、おれのライバルが増えるとは思ってもみなかったな。
そんだけ、あいつの腕がいいってことだ。

おれはパステルの代わりにこのガキに感謝の気持ちを伝えるべく、ガキの頭をくしゃくしゃにしてやった。
「何すんだよぉ!」
「あのな。このトラップ様を抜くなんて10年早いんだよ! それに、10年経ったら、おれはさらにおまえが20年かからないと追いつかないとこまで行ってるからな。だぁらな、パステルとパーティ組むのは、悪いがずっとこのおれ様だ!」

「なっ……! にーちゃん……が、トラップ……!?」

ガキはおれを指さしながら、ぱくぱくと口を動かしている。

ふっ。
ガキ相手にちょっと本気出しすぎたかな。
でも、『鉄は熱いうちに打て』だ。
ん? ちょっと違うか?
『出る杭は打たれる』?
まぁ、いいや。要は、ライバルは早いうちに叩いておくに越したことはない。
おれは大人の余裕を見せて、頷きながら笑いかけてやった。

が、ガキは口のぱくぱくをだんだん落ち着けると、なぜかまた小憎たらしい笑みを浮かべ始めた。

なんだ。まだ打たれ足りないってーのか?

「つまり、にーちゃんさ。パステルって人のこと好きなんだ。他の盗賊が代わりに入るのがいやなんだ。そんでパステルの作品を一番に読みたいからあそこに来てるんだ!」

あまりにふいな攻撃におれはつい「大人の余裕笑顔」をひいてしまった。
しまった、と思う時にはもう遅く、目の前の小僧はそのおれの顔を見てVサインをした。

「あったりーーー!」

突然すぎる、形勢逆転。

「ねぇねぇ! パステルはそれ、知ってるの? きっと知らないよね。オレ、会った時に言っちゃおうっかな〜」

悪夢だ……。

「……どうしろってんだよ」
おれの恨みがましい目線をものともせず、ガキは満面の笑みを浮かべ
手を差し出した。

「なんだよ」
「もっちろん! 口止め料!」

おれは手をひざにやり、がっくり肩を落とした。

おれは、いつから10やそこらの子供に金をせびられるような男になっちまったんだよ。
つーか、いつからこんな小さなガキにすぐに見破られるようなリアクションとるようになっちまったんだよ。
この交渉術に長けたおれが!
これも全て……あの迷子好きの天然マッパーのせいだ!

心の中で一通り叫んでから、目の前に差し出された小さな手をぱちんと軽く叩いた。
「おっし。んじゃな、今度からおれが印刷屋の若旦那にお金払ってもらった本を、読み終わったらおまえにやる。それでいいだろ?」
「えーーー。ケチ! それじゃ、にーちゃんが一番乗りになっちゃうじゃん」
ちっ。ばれてるか。更に言えばこれなら出費も変わらねえ。
「そんじゃ大マケにマケて、パステルにも会わせてやるっておまけつきでどうだ?」
「え? ほんと!?」
ガキは今まで見せたことのないぐらい瞳をきらきらさせた。
なんだ、こいつも年相当っぽい顔するじゃんか。
「おお、男に二言はないぜ。でも、今日の会話の件は一切しないって男の約束を守ったら、だ」
「わかった。男の約束だ!」
興奮気味に即答した後、「でも」と続ける。
「盗賊になってパステルと冒険するのはあきらめないもんね!」
「はん。望むところだ」
おれは自信たっぷりに答えながらも、頭の中で必死に

こいつが10才ぐらいだとすると17才になった頃、パステルは24才前後……。やべぇ、ありえなくもねえぞ。

などと計算していたことは内緒だ。

そうしてお互いの利害が一致したところで、おれとガキは、それぞれ思惑を孕んだ目で見つめ合い、握手をした。
気分は「友好条約及び秘密保全協定の締結」ってとこだろうか。


「しっかし、こんな熱心なパステルのファンがいるとはな〜」
おれは改めて感心する。
「んだよ。いーじゃんか!」
ガキがふくれる。
「誰も悪いなんて言ってねーだろ? あいつ、おまえに会ったらすっげー喜ぶと思うぜ。だから……むしろサンキュー、な」
「あれ? にーちゃん、赤くなってない?」

……やっぱりこいつはヘンなとこ鋭い。
おれは地平線から大分輝きだした光の方を向きつつ「うっせ。太陽のせいだよ、太陽!」と言いながら、そのままガキに別れをつげて歩き出した。

名前も住んでるところも知らないガキだけど。
きっとあそこに行けばまた会えるだろう。
地平線からゆっくりと朝を告げる光がもれはじめた頃に。

Fin.


posted by うみ at 21:43| Comment(6) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今晩はー。
あのトラップが押されている〜(笑)
10年後とか計算しているところが笑いました(笑)
相手は子供なのにしっかりとライバル意識しているようで(^o^;
面白かったです(*^▽^*)
また来ます♪

P.S 自サイトでのアンケートに投票ありがとうございましたm(__)m
本当、参考になります(*^o^*)
Posted by ぱんち at 2006年03月29日 00:27
少年ナイスです(笑)
しかしトラップを負かせるとは……凄いですね〜。
パステルに会った時の少年の反応も気になるところです。
Posted by 明都 at 2006年03月29日 10:15
なんだか、トラ vs ちびトラ って感じでステキですv
パステルのいないところでは本心をちょっとだけ出せてるトラップが好きです〜。

今回も堪能させていただきましたv
Posted by 来海奈々穂 at 2006年03月29日 14:34
ぱんち様
こんばんはー!!
普段はどんなに強気でもパステルがからむと押され気味……、
私の中のトラはそんな感じです(笑)。
あちらでのコメント中途半端になりましたが、
私もオチが先で後からタイトル決めるんですよ〜。
なので本当に毎回迷うし、つけた後も
「本当はもっとぴったりくるのがあるんだろうなー」
と後悔しまくってます(笑)。
私の方こそ、「同じ人がいるんだ!」と思って嬉しくなりました〜。
コメントありがとうございました!!

明都様
こんばんはー!
今の時点でトラが敗北気味なので、10年たったらマジでやばいです(笑)。
という訳で、10年後までにはなんとかトラパスカップルを
成立しておいてもらいましょう。
そうそう、書いててちょっと「パステルと少年が会った時バージョン」も
書きたくなりました。
もちろん、間にトラがいて、一人で青くなったり赤くなったりしてもらって(笑)。
でも収拾つかなくなりそうなので自粛しておきます_| ̄|○
コメントありがとうございましたー!

来海奈々穂様
こんばんはー!
なんかこう、トラと小さい子のやりとりって好きみたいです、私。
トラって、どんなに小さい子でも良くも悪くも対等に扱う
イメージがあるんですよね〜。
小説はパステル視点のみなので、トラ視点小説があったら
意外と他では素直にパステルを誉めてる時もあるんじゃないか
とか妄想してます。
そうしてトラの周りにはもっさりとトラパシストが増えていたりしたら
結構笑えます(゚∀゚)
コメントありがとうございましたー!
Posted by うみ@管理人 at 2006年03月29日 23:53
こんばんはー。
遅参ですみません_l ̄l●lll ガクリ

普段ならトラの方が何かにありゃ他の人に「口止め料!!」とかやってるだろーに、パステルの事となると途端に実力が発揮できなくなるというのは……

あっはっは。まさにトラ。それでこそトラです!!

これでもし、書いてるのがパステルじゃなくてクレイだったりとかキットンだったりとか(あんま想像したくないですが)すれば、「本人に会わせてやっから、仲介料」とか言ってたんでしょうにねー。

十代の歳の差って、大きいようで小さいですからねぇ。ほんと、油断してたら横から掻っ攫われますね。わぁい、敵ばっか増えてるぞトラ!

トラパシストならば突っ込むだろうところをズビシッと突っ込んでくれた少年の活躍に乾杯&どこまでも隠しきれないトラに万歳でした♪
Posted by 火車 at 2006年03月30日 23:09
火車様
こんばんは!
いや、あの、サイト訪問はあくまで自分のペースで来るものですから、
早いとか遅いとか気にせずに〜っ!!
かく言う私も相方に隠れて見ないといけないので、
なかなか全てを日参できないでいますし(´Д⊂)
火車さんところも3日連続アメブロ渋滞に巻き込まれ、
小説感想書くタイミング逃してます。 _| ̄|○

そうそう、普段他人に言う方のセリフであろう「口止め料!」を
ガキんちょに言わせた時は、なぜか私に爽快感が……(笑)。
どうやらトラ相手だとSになってしまう模様。(エェ?)

ほんと早くまとまらないと、どんどん敵が増えそうですよね〜。
だけど、どの敵もパステルの天然+母性の最強ぽわわんシールドに
はじかれそうでもありますが(苦笑)。
という訳で、トラには頑張ってその最強シールドを
なんとかして突き破って欲しいものです。
まだまだ先で結構ですけどネー( ゚Д゚)y─┛~~

コメントありがとうございましたっ!!
Posted by うみ@管理人 at 2006年03月31日 20:37
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。