2006年05月02日

[SS]What's a present?[2]

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。


※トラップ誕生日記念SSです。

<3>
女の子人気のお店とあって、店内の8割は女性客。時々いる男の人はやっぱりカップル連れ。しかも、男女共おしゃれで身なりのいい人が多い。
冒険者然としたわたし達はちょっと浮いていた。
周りからちらちらと視線が集まる。
トラップは
「ちぇっ。そんなに珍しいモンでもねぇのに、やたらと見やがって」
とぶつくさ言っていた。
これが、いつもの酒場だったら今のセリフをわざと大声で言って、トラブルになるところなんだけど、今日は抑えたんだろうな。
でも、言わずにはいられないところがトラップらしいというか、
いつものトラップが垣間見えたというか。
わたしはちょっと安心してクスクスと笑ってしまった。
トラップは「何笑ってんだよ」と言いながらも、普段の見慣れた表情になり、
そこからは二人共いつもの調子で、なんていうことはない話題をしながら
おいしい食事を堪能した。

食事が、これがまた本当においしくて!
前菜・スープにサラダとメインのパスタに焼き立てパン、デザートとミルル茶。
前評判通り、全てがおいしい!
特に、普段は滅多に食べれないデザートまでついているのが、もうこの上なく幸せ!
わたしは幸福な気持ちを噛み締めながら、最後のデザートも一口一口味わって食べていたら、ふとトラップの視線を感じた。
「ん?」
「おいしいか?」
「うん! もう最高においしい!」
わたしが最上級の笑顔で答えると、トラップは心底ほっとしたように言った。
「なら、よかった」

……やっぱりいつものトラップじゃない。
わたしはまた落ち着かない気持ちになってきた。
いつもだったら「さすが食い意地張ってるだけあるな」とかそういう意地悪いこと言われて、わたしがポカッとするところじゃない?
なのに、今の会話じゃ、ここここ恋人同士みたいな……。

「うわーーーーっ!」
わたしはそこまで考えて思わず声に出して叫んでしまった。
トラップもびっくりしてきょとんとわたしを見ている。
「突然なんだよ」
「あはははは。なんでもない、なんでもない。そろそろ出よっか」
わたしはごまかしつつ、立ち上がった。

そして、トラップが会計をしている様子を少し遠目で眺めていた。
パーティ内でわたしじゃない人がお金払ってる……。
しかも、それがクレイでもノルでもなく、トラップ……。
なんだかとっても不思議な気分。
会計後「ごちそうさまでした」とぺこっとしても、
「こんだけおごったんだから、うんぬんかんぬん」なーんてことは言われず、
ただ一言「おぅ」で済まされた。
ほんとに調子狂うよね。



<4>
その後、どうしたかと言うと。

なんと帰ってきちゃったのだ!
つまり、エベリンまで行ってお昼食べただけ!
トラップはといえば、帰りの馬車では何かの糸が切れたかのように隣でガーガー寝てるし。
今までトラップの考えてることは大抵わかったのに
今日だけは本当にさっぱりわかんない。
結局何が目的だったんだろう。
最後まで「誕生日プレゼント」と関係ないまま終わっちゃったし。

わたしがそんな風に色々考えている間にシルバーリーブに無事到着。
寝ぼけたトラップを引きずりつつ馬車を降りると、ひらりと何かが落ちた。

なんだろう?
拾ってみると、1枚のメモ書きだった。


<オーシ直伝必殺テクニック>
1.待ち合わせには少し遅れ、やきもきさせる。
2.知性をみせる。社会情勢をさりげなく話題に。→事前に新聞熟読
3.歩く速度に気をつけるべし。
4.女の子に人気のお店に行く。→マリーナに事前にリサーチを頼む



と読んだところで、さっきまで半分しか目が開いてなかったトラップが目を見開いて、真っ赤な顔して紙をぶんどった。
「だーーーーっ! それ返せっ!」
「これって、もしかして……」
わたしが言おうとすると、それを遮ってトラップが咳払いをした。
「あー、読まれたんだったら、話は早ぇ。つまり……」
それをわたしがもう一度遮る。
だって、ようやく状況が飲み込めたから!

「つまり、トラップは『デートの下見』をしたかったんだ!」
うん、うん!
それで全てわかった。
プレゼントの代わりにデートの下見につきあえってことだったんだ。
歩く速度を確かめたのも、あのお店の食事がおいしいかどうか気にしてたのも
そういうことだったんだ。
それなのに、わたしってば、危うくとんでもない方向に考えがいくところだった。
トラップに言ったら、大笑いされるところだったな。

わたしが一人スッキリしていると、トラップは膝をついてうなだれていた。
うわ。そっか。
あんなこと指摘しちゃ、トラップのプライド傷つけちゃったかも……。

わたしはトラップの袖をクイクイッと引っ張った。
「あ、でもね、でもね。大丈夫! すごく楽しかったよ。きっと本番もうまくいくよ!」
「……も、いい」
うっ。フォロー失敗。
トラップは自力で立ち上がるととぼとぼと歩き出した。
えーっと、えーっと。
せっかくの誕生日なのにこんな状態じゃトラップに申し訳ない!
わたしは必死にその力ない背中に声をかけた。
「あ、あのね! ほんとに大丈夫だよ! だって、このわたしでも今日はちょっとドキドキしたもん。だから……」
わたしの言葉にトラップは止まり、少しして振り向いた。
「ふん、そうなんだ。じゃあ、ついでだから、さっきのメモ書きの最後も試していいか?」
最後? わたしの見た最後は「女の子に人気のお店」だったけど……。
そう思う間にトラップは、わたしをふわっと抱え込んで耳元で囁いた。

「5.帰り際に抱き締めて『好きだ』っていう。」

ふ、ふぇぇぇぇ。
わたしがパニックになってると、トラップはいつもの余裕のある笑みを浮かべた。
「以上、終了。どうだ。男前が本気出すとこんなもんだ」
わたしが尚も固まっていると、おでこをピンッと人差し指ではじいた。
「ちっとお子様には刺激が強すぎたな。……ふんじゃ、本番を試すべく色気のあるグラマラスなねーちゃんを探してくっか」

え?

よくわからないけれど、気がついたら歩こうとするトラップの腕を掴んでいた。
「あんだよ?」

えっと、なんだろう?
この気持ちをどう説明すればいいのか、まだわたしには見つけられない。
だから、今言える言葉を。

「そういえば、まだ言ってなかったから。


 お誕生日おめでとう、トラップ!」



Fin.


posted by うみ at 18:11| Comment(3) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちはーっ!! ちはー……ちはー(こだま)

うっうっ……(T□⊂
(ウチの方)コメントレスさえ止まっててすみません……またもや休憩室からコメントさせていただいてます……。
周りから「何か嬉しい事でもあったの?」と訊かれるくらいのニマニマ度合い……さすがです、うみさんっ!! ビバ☆デートっ!! そしてやっぱり伝わらない本音!! あははうはうは(怪)

きっと宿に帰ったら、クレイあたりに
「あれ? お前たちもう帰ってきたのか?」
とか不思議そうな顔されるんでしょうねー。
んで、
「あんでだよ」
とか言うと
「いや、キットンがさ、今日は帰ってこないだろうって言ってたんだけど」
とかってセリフに被るように何処からかキットンのぐふぐふと言う笑い声が!!
物凄い顔でキットンを睨むトラップに微塵も臆する事もなく
「おやトラップ、もう帰ってきましたか。私はてっきり……まぁ、でもこうなるだろうとは思ってましたけどね、ぐふ……ぎゃっはっはっ!!」
とかトラップ見ながら吹き出しちゃったり?
当然トラップはキレるでしょうけど(笑)
折角、ちょっとは進展したかなーとかプラスで考えようとしたのにコイツめ!! みたいな。
んでまた馬鹿騒ぎになってパステルに呆れられて、でも
「うん、やっぱりトラップはこうでなくっちゃね!! ちょっとドキドキしちゃったけど、私はこっちのトラップの方が落ち着くかな?」
なんてもう台無しな事とかカノジョは考えちゃうんでしょう。
他のみんなはトラップへのプレゼント、何にしたんでしょうね〜。
誕生日おめでとートラップ☆ そして今年も報われなそーな空回りに期待しますよ(鬼)

なんか一人暴走したコメントですみません!! でもやっぱりうみさんSSラブです!!
ではでは〜
Posted by 火車 at 2006年05月03日 14:39
ああ、こういうオチだったとは!
堪能させていただきましたーv さすがパステル!
でもトラップもちゃんとおいしいところ持って行っちゃってますねえ。
火車さんのコメの、帰宅してからのクレイ&キットンのやり取りも目に浮かぶようです〜。

何はともあれ誕生日おめでとうトラップ!
うみさんもお疲れ様でした!
Posted by 来海奈々穂 at 2006年05月06日 22:30
火車様
こんばんはー!んはー……んはー(以上こだま記述が似合わない挨拶でした)
ビバ☆デートですよー。
でもパステル思考だとあくまで「下見にお付き合い」っすよー(笑。
誕生日でも空回り。
いや誕生日だからこその空回り、か(ニヤリ。
つーことで、ニマニマしてくださったら、ワタクシ本望でございますっ!!
しかーし!
むしろ私としては火車さんの「SSのその後」にニマニマなんですけどっ!
ありえそう〜〜。
いっそこの勢いでSSとして書いてもらっても……なんてこそっと言ってみちゃったり。

あ、向こうのコメントとかは気にしないでくださいね〜。
アホコメントしかしてないし。(冫、)
色々なことがクリアになる日が早く来るといいですね。
お忙しい中コメントありがとうございましたー!!



来海奈々穂様
こんばんはー!
う……こういうオチでだ、大丈夫だったでしょうか?('・c_・` )
今回、パステル視点で笑い要素を入れてみるっていう実験をしてみたので、
一部の方々のイメージを崩してしまったんではないかとちょっとドキドキです。
んな実験を記念SSでするなっていう話ですが(汗。

トラは空回りさせつつ、おいしいところも用意しておきました。
一応誕生日なので。(一応かよ)
でもどんなにおいしいシーンがあっても、
いっそ告白ぐらいの勢いになったところでセリフを奪われ、
さらに誕生日デートを「下見」で片付けられた彼の悲哀は
埋まりそうにないかも。
って、……改めて書くとひどい設定ですね……。(´Д⊂)
ま、本当のおいしいシーンは新12巻におまかせ♪ということで。
コメントありがとうございましたー!!
Posted by うみ@管理人 at 2006年05月08日 20:10
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