2006年12月12日

[SS]スパンコール・ナイト[2]

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。

[2]

という訳で、やっと冒頭の状況になるんだけど。
わたしとトラップ二人でもう30分以上はこうやって待ってるんじゃないかな。
ただでさえ普段寝てる時間なのに、こうしてただ待ってると寒さもあって
ものすごい睡魔が襲ってくる。

そんな過酷な状況にも関わらず、珍しい現象だからか、他にも地元の人がポツリ
ポツリと座っている。大体が家族か恋人同士のようで二人組がほとんど。
そんな中、向こうの方で団体様になっているのが、多分、クレイ達。
皆カンテラを消して待っているから、人影だけで誰が誰だかわからないけど、
あの団体だけは人数の多さですぐにわかっちゃうんだよね。
なんかおかしい!

わたしは膝を抱えて、そっちを向いたままトラップに話しかけた。
「あそこがきっとクレイ達だね」
とにかく眠らないように、思いついたことを口にしたんだけど。

「今日はクレイじゃなくて残念だったな」
トラップは怒るでもなく不機嫌でもなく、ただつぶやいた。
え? どうして? どういう意味?
思ってもみない反応にわたしは返答に困ってしまった。
と同時に、ふと、前にもこれと似たようなことがあったような気がした。
あれは確か……。
わたしが記憶の糸をたどろうとしたその時、トラップが
「お!」
と短く叫んだ。

びっくりして、前方を見ると。


漆黒の闇に、キラキラと輝く光の破片。
雪のような白ではなく、宝石のような白金。
辺り一面
とぎれることなく
後から
後から
煌きながら
静かに舞っている。
思わず手を差し出すと、あっという間に手のひらで溶ける。
氷の結晶。

これが、“スパンコール・ナイト”……!


突然現れた闇と光の幻想的な世界に、わたしはただただ膝を抱えて見とれていた。
どれだけそうしてただろう。
もしかしたら数秒かもしれない。
でも、もう時間なんて関係ないと思うくらい目の前の奇蹟に感動していた。


「すごい……」
ようやくわたしがつぶやくと同時にトラップも同じようにつぶやくのが聞こえた。
「すげぇ……」

思わず顔を見合わせる。
普段はケンカばっかりでまったく正反対な気がするのに、時々こういうところで
合っちゃうのはやっぱり長くパーティをやってるからかな。
わたしがふふっと小さく笑うと、トラップは何も言わず足を投げ出して、上半身
も雪の上に横たえ、頭の後ろで手を組んで空を見上げた。

つ、冷たそーーーー!

……と思ったけど。
こんな特別な夜だもん。
わたしも仰向けで見てみたい!

少ししてから、わたしもエイヤッと抱えていた膝を開放して足を伸ばしてから、静かに横たわってみる。

ゴチ。

ん? 頭のとこに何かある。
そう思って横を見ると、手を組んでたはずのトラップが腕を伸ばしていた。
「うわ、ごめん!」
慌てて起き上がろうとすると
「腕曲げてんの疲れた。重しがあった方が疲れとれるから、のっけとけ」
と言われてしまった。
人を重し扱いするなんて、失礼な!
一瞬そう思いかけたけど、もしかして、もしかすると。
雪の冷たさから守ってくれたのかな。
こっちをチラリとも見ずひたすらに上を見ている横顔を見ながら、わたしはいい
方に思いなおして、素直にトラップの腕に頭をのせた。

そうして、上を見上げると。
そこに広がっていたのは、さっき以上の暗闇と光のコントラスト。
他には何もなくて。
無限のキラキラがわたしの目の前で踊っている。

すごい、すごい、すごいよーーーーっっ!!

冷たさなんて全然気にならない。

わたしは思わずつぶやいた。
「今日、トラップと来てよかったな」

トラップは相変わらずで
「明日のメシ代浮いたからな」
なんて言ってたけど、わたしは上を向いたまま構わず続ける。

「きっとトラップと来てなかったら、こんな風に寝転んで見ることなかったもん」
「……ふーん。……じゃあさ」


じゃあさ、の続きがないなと思っていたら、ふいに視界が狭まった。
トラップが、わたしの頭を乗せている腕はそのままに、半身を起こしてくるりとわたしを覆うようにして空いてる手をわたしの顔のすぐ横の地面についていた。

トラップ越しに見える夜空と光の破片。


……なんて、見ている余裕がないぐらい真面目なトラップがそこに、いた。
何も言わず、ゆっくりとわたしに近づいてくる。


061216.jpg


赤い前髪。
シャープなあごのライン。
そして、――意志の強そうな目。

目と目が合って、視線をはずせない。
見慣れたはずの顔なのに、近づく度にわたしの心臓は熱く早くなっていく。

トラップはそんなわたしの心臓のテンポに逆らうかのように、ゆっくり近づく。

トラップの後ろでしばった髪がさらりと垂れ、わたしに触れそうになる。


これは何?
これは何?
コレハナニ?




わたしが固まってパニックになっていると、トラップは急に動きを止めた。

そしてふっと笑って、静かに
「じゃあ、次はチビ達も連れてパーティ皆で寝転んで見ようぜ」
と言った。

あきらめたような、困ったような、悲しいような、泣きそうな。
そういうのを全て飲み込んだような、初めて見る顔で。




なんで自分がパニックになっているかも
なんでトラップが急に近づいてきたのかも全然わからないけれど、
トラップにあんな顔をさせたのはわたしのせい。
それだけはなんとなくわかる。

そう思うと熱く早くなった心臓がキュッとなって、苦しくって苦しくって
だめだって思うのに、気がついたら涙がこぼれていた。

「なっ、なんだよ。おれ変なこと言ったか?」

慌てた声に、手で顔を隠しながら無言で横に振る。

「じゃ、なんだよ」

もう一度顔を振ってから、ようやく声を出す。
「ごめんね」

「んだよ。なんで、おめぇが謝るんだよ。訳、わかんねー」

トラップは片手で自分の髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら
「あーーー! くそっ」
とつぶやいて、元のように隣に寝転んだ。


[3]へ


posted by うみ at 19:55| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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