2006年12月13日

[SS]スパンコール・ナイト[3]

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。





[3]

再び視界が開いたわたしは体を起こして膝小僧に顔をうずめ、心臓が元に戻るの
を待った。

すー。
はー。
すー。
はー。

ゆっくりゆっくり深呼吸。
ちょっとずつちょっとずつ落ち着いてくる。

でも落ち着くと同時に、今度は急に恥ずかしくなった。

トラップがただちょっと近づいただけで、わたしったら、
勝手にパニックになって、勝手に泣いたりして何やってるんだろ。
冒険してる時なんてもっと密着することだってあるのに。

でもね。
あの時は、いつもの「仲間」っていう感覚じゃなくて、
首や肩や腕や、それから全体から発する空気が「男の人」って思っちゃっ……。
って、うわぁぁぁぁっ!
わたしったら何考えてるの!
ヘン!
絶対ヘン!

大体、近づいてきたからって、トラップがまさか
キキキキキスしようとしたとか、そういうのありえないし!

あぁ、だから何考えてるのよ、わたしはっ!

はぁぁぁ、もうもう!


わたしが顔をうずめたまま、人知れずバタバタしていると
隣のトラップが立ち上がる気配があった。

思わず顔をあげる。
トラップはわたしを見ることもなく、歩き出そうとしていた。

「あ、あの、トラップ?」
鼻をすすりながら声をかけると、背中を向けたまま答えた。
「クレイ、連れて来る」

え?

再び歩き出したトラップを慌てて追う。

「トラップ!」

トラップの前に回りこんで立ち止まる。

「トラップ。違うの。そういうんじゃないの。そういうんじゃないから!」

あー、もう。
上手く言えない。

トラップは目を合わせないようになのか、上を向いたまま。

「……だからね。だから、今日は二人で見よう?」

ようやく目線がこっちを向く。
う……、唐突だったかな。
でも今のわたしにはこれが精一杯。

案の定トラップはちょっとびっくりしていたけど、
だんだんといつものトラップらしさが目に宿っていった。

にやりとして口を開きかけたから、わたしも同時に口を開く。

「「リタのおごりがなくなるからな」」

「あはははは! 言うと思った」
わたしが笑うと、トラップは「人の真似すんな」と言ってわたしの鼻をパチンとはじいた。

うん、これがいつものわたし達。
ようやくほっとして、改めて上を見る。
全てを塗りつぶしたような暗闇と、全ての方向に発している光の粒に平衡感覚がなくなりそうになって、思わずトラップの腕に掴まる。

幾千のキラキラを身体に受けながら、沈黙が支配する。

でも、その沈黙は全然いやなものじゃなくて。
むしろ心地よくて。

そんな時ふと思った。
さっき「じゃあさ」の後、最初は何を言おうとしてたんだろうって。
でも今トラップに聞いても、きっと、ううん、絶対教えてくれないと思う。


だから。
いつかまた今日みたいな夜の日に聞かせてもらおう。

――いつかまた、二人の夜に。

そんなことを思いながら、いつまでもいつまでも夜空のスパンコールを眺めていた。

Fin.


最後までお読みいただきありがとうございました。
全てのトラパシスト様へ
Wishing You A Merry Christmas!!


posted by うみ at 20:02| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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