2007年01月31日

[SS]いつかの誕生日

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。








いつかの誕生日



ヒポちゃんに乗ってのおつかいクエストの帰り道。
ズールの森を通っている時にキットンがふと声をあげた。
「あれ? そういえばこの辺でしたよね、様見の泉って」
「あーー! あの過去か未来の自分が見られるってやつか」
クレイが思い出しながら頷く横で、わたしも頷いた。

懐かしいなぁ。
ヒールニントの冒険。
あの時、私が様見の泉を覗いたらヒールニントのダンジョンで迷っているところが映し出されたんだっけ。
今見たら何が映し出されるんだろ。
そう考えたら、ムクムクと好奇心が湧いてきた。

「ねえねえ。まだ日が落ちるまで時間もあるし、ちょっと寄って見てみようよ!」
「けっ。わざわざその為に寄んのかよ。めんどくせー」
うん、まぁ、この人は予想通りの反応で。
でも、
「今後のヒントになるかもしれませんしね」
「まぁ、どこかで休憩はとろうと思ってたからいいんじゃないか?」
「おれもいいと思う」
と、残りメンバー(あ、ルーミィとシロちゃんはお昼寝中)全員の承諾を得て
様見の泉で休憩をとることが決まった。



「あーっ! そうそう、ここ、ここ」
わたしが泉を指差すと、こちんと軽くゲンコツが降りた。
見上げると、赤毛の下からわたしをにらむトラップがいた。
「なぁーにが『ここ、ここ』だ。おめぇが前に書いた地図がてきとー過ぎんだよ。無駄にスライムばっかり顔合わせるし、休憩どころか余計体力使っちまっただろ!」
「ちゃぁんと書いたはずだったんだけど……。おっかしいなぁ」
「まぁまぁ。見つかったからいいじゃないか。この辺はもうスライムも出ないみたいだし、休憩にしよう」
連続でスライムを切っていたクレイは額の汗を拭きながらもにっこりと笑ってくれた。
うぅぅ、クレイごめんね、ありがとう。

で。
その様見の泉。
石の台座もその上の石の器も以前と全く変わらない姿でただただひたすらにコンコンと澄んだ水を湧き出させていた。
こうやって見ると単なるお水なのに、過去や未来がわかっちゃうなんて本当に不思議。
神様が宿ってるのかなぁ。
それとも妖精?

わたしがそんなことを思いながら泉を眺めているとキットンが威風堂々といった風情で泉に向かい始めた。
「では、わたしから行ってもいいでしょうか? キットン族の記憶が戻った今、何かすごいものを見てしまうかもしれませんし」

いいでしょうかも何ももう向かってない?
ま、いっか。
キットンのこういうところに慣れているわたし達はちょっと後ろでキットンの後姿をじっと見守ることにした。

そのキットン。
最初はじーっと黙ったままだったけど、突然
「おおおおおおっっ!!!」
とものすごい大声をあげはじめたからうるさいのなんのって。
これじゃこっちまでスライムが押し寄せてきちゃいそう!
だけど、そんなことはお構いなくキットンの大声は続いた。
「おーっ! ああっ! そうです、そうです!」
何よ。何よ。何なの、一体!
たまらずトラップが声をかけた。
「おい、キットン! 『おー』とか『あー』じゃわかんねーだろ。何が見えんだよ。おれらの未来か?」
「いえ、違います。わたしは未来じゃなくて過去でした」
ようやく満足そうに振り向いたキットンはにへらにへらと締まりがない顔。
「スグリとの再会シーンだったんです。あの時の自分は夢中だったので、細かいことをあんまり覚えてなかったんですが、今見てみて改めて記憶に刻むことができました。いやぁ、素晴らしいですね! 様見の泉って!」

あぁぁぁ、なるほどー。
考えてみれば、自分の行動を客観的な視線で見ることなんてできないから、そういう自分の幸せなシーンを見られるのってすごく幸せな体験かもしれない。
いいなぁ〜。キットン、幸せそう。

続いてはノルに見てもらった。
ノルは最初から最後まで静かに泉を見つめた後、
「大きいベッドで寝てた」
と言った。
大きいベッド……?
あ、それって。
「また自分達の家で生活できるってことかな」
わたしが思っていたことをそのままクレイが言う。
「うん、そうだと思う。今まで見たことないベッドだったから」
ノルも大きく頷く。
「お! そいつはなかなか幸先いいんじゃねーの?」
トラップも腕組しつつ、嬉しそうな笑顔。

で、次はクレイ。
「うーーーーーーん」
泉を覗き込んでしきりに唸っている。
「どうしたの?」
「いやなものでも見たんですか?」
わたし達の声に振り返ると、困ったように
「剣を磨いてた」
とつぶやいた。
「ずっと?」
「そう、ずっと」

それを聞いてぶほっと笑ったのはトラップ。
「そ、それ、過去とか未来とか関係ねーじゃん! クレイはいつだって剣磨いてるもんなー!」
「うるさいぞ、トラップ!」
「あ、ちなみにクレイちゃん、その時に竹アーマーつけてた?」
「……だったら何だよ」
「そしたら過去かもしれないけどさー、もしかしたら遠い未来も竹アーマーだったりして。ぶ、ぶほほっ」
おなかを抱えて笑うトラップにクレイは憮然としていたけど、その横をすりぬけ、いよいよわたしも泉に顔が映るぐらいに近づけてみた。

前と同じように、湧き出る泉で模様を作っていた水面みなもがさーっと鏡のように真っ平らになって、そこから徐々に何かが見えてくる。

最初にわかったのはまぁるいケーキ。
その奥に座っているのは『わたし』。
なんだろう?
確かに自分なんだけど、今のわたしとはほんのちょっとだけ違う気がする。
……もしかして数年後のわたし?
その『わたし』はとても幸せそうに笑っていた。
ケーキの上のろうそくは揺らめきながらすぐ下の「Happy Birthday!Pastel!」というプレートを浮かび上がらせていた。
テーブルには2つのワイングラスとお皿。
そこに手前から入ってきたのは男の人、だった。
その後姿はすらりと痩せていて、肩にはサラリとした赤毛が……。

「おい。黙ったまんまで何見てんだよ」
急にすぐ後ろで声がして、わたしは心臓が止まるくらいびっくりした。
「な、なんでもなっ……!」

バシャッ!

泉の水面を隠そうとして手を出したら、そのまま勢いがついて泉に両手を突っ込んでしまった。

「わぁっ!」

「ったく、何やってんだよ。次におれも見ようと思ったのに、これじゃ見えねぇじゃんか」
あぁ、そう! 濡れたわたしの心配よりそっちですか!
全くしっつれいしちゃうな〜。
「なによ。トラップはこういうの興味ないんじゃなかったの?」
わたしもついいじわるく聞いてみる。
「いや、寄るのが面倒だっただけで、寄ったらそりゃ見た方がおもしろいに決まってんじゃん」
「でも占いとか迷信とか嫌いでしょ?」
「そりゃ『当たるも八卦、当たらぬも八卦』みたいなのはな。でもこれは、前回実証済み。本当に当たるってわかってるからな」

本当に当たる。

その言葉にさっきのシーンがよみがえる。


いや、でも!
あれが当たったとして。
痩せて背が高い人なんてこの世にいーっぱいいるし!
赤毛の人だってそれなりにいっぱいいるし!
あの人が誰かなんてわからないもんね!

わたしは深く考えないように頭をフルフルと振った。

「おめぇ、頭大丈夫?」

現時点では、あきれたように視線を投げかけるこの人しか当てはまらないけれど、ね。



Fin.……?



おまけ
「なんだよ。さっきからニヤニヤして」
「うん、あのね。昔見た光景ってこれだったんだなぁって思って」
「は? なんだ、そりゃ」
「あの時のあの人はやっぱりあなただったんだなって」
「おいおい。全然話が見えねぇよ。わかるように話せって」
「うん、あのね……」



Fin.


posted by うみ at 21:16| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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