2005年06月22日

誓い1

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。



トラパシストの方へ…この創作は結婚式モノです。そこまでの未来はNGという方は
スルーしてください。ごめんなさい。




誓い

[1]
「お支度整いましたよ」
はぁぁぁぁ。
いよいよだ…。
まつ毛も髪の毛もくるっくるのヘアメイクおねえさんにそう言われ、
改めて緊張が走る。
教会脇にある小さな支度部屋。
いつのものだろうっていうくらいアンティークな鏡台の前の
丁寧な刺繍がしつらえてある椅子に座っている私は小さく深呼吸した。
その横にもう一つ大きな全身用の鏡があるだけのシンプルな部屋は、
わたしとヘアメイクさんとあと一人入ったらもういっぱいじゃないかというぐらいの
広さだった。
(ま、わたしのふわふわドレスが場所をとってるっていうのもあるんだけど)
でもヘタに広い部屋だったら余計に緊張しそうだし、今はこの狭さが
ちょっと落ち着くかも…。
などと考えていると、支度部屋の扉がふいに開いた。
「パステル!!」
控えめだけど、弾んだ声で顔を出したのはマリーナだった。


「マリーナ!」
高まっていた緊張が少し和らいで、今日初めてかもっていう笑顔で答える。
向こうはこれ以上ないっていうくらいの笑顔。
「わぁぁぁっ…!!きれい、きれい!お姫様も顔負けのかわいさだよ、パステル!」
そういうマリーナも大人っぽいスレンダーなブルーのドレスを着こなしていて
すっごくきれい。
「本当? ありがとう!それと、ネックレスとイヤリングもばっちりドレスに合ったよ!
本当にありがとう!」
わたしは左手でネックレスを右手でイヤリングを指で指しながら答えた。
そうなの。実は結婚のお祝いにってマリーナがネックレスとイヤリングを
手作りしてくれたの!パールとそれを囲むように雫の形のクリスタルが
つらなったすっごく素敵なネックレスと、お揃いのイヤリング。
今日初めてドレスと併せてみたんだけど、ぴったりだったのだ。

でもそう言った後のマリーナはそれに答える訳でもなく、わたしをじっと見て目をうるませていた。
「え? やだ。どうしたの?」
「…うん。なんかね、これまでの出会いから今までを思い出しちゃって…。
本当に…よかったね。」
わ。わ。
「マリーナ!そんなこと言い出すとこっちまで涙腺緩くなるからやめてって!」
言ってるそばから、本当に涙腺が反応してるし!
「あっ、そうだよね。ごめん、ごめん!じゃあ、話題変えるね。
というか、そのために来たんだけど」
マリーナは目頭を一旦押さえた後にはいたずらっぽい笑顔になって、意味ありげにわたしを見た。
「え? 何?」
「あのね、たまたまそこの廊下歩いてたら“新郎様”がそわそわうろうろしてたの。
で、わたしの顔見るなり『あいつの準備まだかって聞いてこい』って。わたし、それこそ
小さい頃からずっと見てるけど、あーーんなに緊張してるトラップ、見たことないよ!」
言い終わった後もクスクスと笑いが止まらない。
そんなマリーナを見てたら、わたしも笑いが止まらなくなってきちゃった。
でもお陰でわたしの方の緊張がとれたみたい。
「そっかぁ。じゃ、その緊張してる“新郎様”に『もうすぐで終わる』って伝えて!」
って言うと、マリーナは親指を立てて
「了解!じゃ、また後でね」
と言って、また支度部屋から風のように消えていった。

「じゃあ、最後に全身鏡でもう一度チェックしましょうね」
というヘアメイクさんの声でわたしは鏡台から大きい鏡の方へ移動した。
髪は夜会巻き風にアップにしてもらって、上にはティアラ。
バラの刺繍が縁取られたロングベール。
胸もお揃いのバラの刺繍のレースが装飾され、背中には小さいくるみボタンが一列、
腰にはボリュームのあるリボン、それに続くように広がる長いトレーン。

鏡に映るわたしの向こうに、わたしはいつしか語りかけていた。

お父さん。
お母さん。
わたし、今日結婚するからね。
だから、ちゃんと見ていてね。
けんかもいっぱいしたし、泣いたこともあったけど、
誰よりわたしのことを考えてくれて、守ってくれて、
それでいて前に進めって言ってくれる人だから。
だから、わたし絶対幸せになるよ!


「はい、大丈夫ですね!」
ベールやトレーンなども細かくチェックしてくれたヘアメイクさん。
最後にバラのラウンドブーケを手渡してくれた。
このブーケはスグリが作ってくれたもの。
その他にもパーティの皆はもちろん、みすず旅館のご夫婦、猪鹿亭の皆、
今までの冒険で出会った人達…色んな人に色々なお祝いをいただいた。
わたしはなんていっぱいの人に見守られてここまできたんだろう。
そう考えるだけで胸がいっぱいになる。

「…大丈夫ですか?」
ヘアマイクさんの声ではっと気づく。
いけない、いけない。すぐ感傷的になっちゃうな。
「あ、大丈夫です!」
と答えると、こちらを安心させるかのようににっこり笑った。
「じゃあ、行きましょう!」
誘導に従って支度部屋を出る。
うぅ…。普段絶対履かないようなヒールの高い靴のうえに
トレーンの長いドレス…絶対転びそう。
そんなことにならないように、ちょっとずつ歩く。

と、本当は右隣が控え室のはずなのに、廊下でさらさらの赤毛がいったりきたりと
揺れているのが見えた。

次へ


posted by うみ at 13:11| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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