2005年06月25日

誓い2

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。



トラパシストの方へ…この創作は結婚式モノです。そこまでの未来はNGという方は
スルーしてください。ごめんなさい。





[2]
今日のもう一人の主役。
わたしの姿に気づいて一瞬目を合わせたから、こっちへ向かってくるんだろうなって思ったのに。
突然背を向けて、わたしとは反対方向へ歩き出そうとした。
えぇ?! ちょっとーーー!
…と叫ぼうとしたけど、その前に、ヘアメイクさんが声をかけてくれた。
「ご新郎様! もうそろそろ案内役のシスターがきますので、
控え室から離れないでくださいー!」
観念したようにくるっと向きを変え、こっちに来るものの、
目線は絶対合わせようとしない。しかも近づいての第一声は不機嫌声。
「…遅せえよ」

…まったく、もお!
せっかくの結婚式の新郎様のセリフとは思えないっ!
「しょうがないでしょ。今日が人生で一番頑張ってきれいになった日なんだもん!
だから、ちゃんとこっち見てってば!」
「へえ。…今日が一番ってことは明日からは転がり落ちる一方ってことか?」
視線はあさってのままで皮肉な口調。
相変わらずかっわいくなーいっ!
ま、この人から「きれいだよ」なんて言葉もらえるとは思ってないけどさー。
でも「いいんじゃん」くらいは言ってくれたっていいのにー。
ふんだ。
わたしはブーケを持ってない右手でトラップを殴る真似をし、トラップが大げさによけた。
とその時、トラップの後ろから
「ふぁっ」
と声が聞こえた。
二人で「ん?」と思いトラップの背後を見てみると、
トラップの背中にぶつかったのか鼻を押さえたシスターが立っていた。

小柄でまぁるい眼鏡をかけたかわいいおばあさん、という感じのシスターは、
その眼鏡を鼻の上にかけ直しながら、わたし達の間にちょこちょこと移動してきた。
「今日はわたしが案内役をします。よろしくね」
にこにこしながら、わたしとトラップそれぞれと握手をした後、
「では、さっそく教会前へ移動しましょう」
と言うと先頭に立って歩き出したので、わたし達はヘアメイクさんに軽く挨拶をして、
その後に続いた。


歩きはじめたものの、トラップを見上げたら、なんか今まで見たことがないような
こわばった顔。もしかして…と思い、下から覗き込むようにして聞いてみる。
「ねえ。もしかして、ものすごーーーく緊張してる?」
しばしの沈黙の後、ぼそっとつぶやいた。
「……おれ、結婚式なんて二度とやらねえ!」
視線を前に固定したまま仏頂面で言うトラップを見てたら、なんだかとっても
おかしくて。
わたしは最後にちょっとだけ残っていた緊張もなくなって、
すっかり楽しくなってしまった。
「当たり前でしょ!わたしだって二度も結婚式するような人生いやですよーだ!」
笑顔で答えたけど、トラップはフンと鼻をならしただけだった。


そんな話をしている間に教会を回りこんで正面の扉に到着。
そうそう、今日は気持ちのいい快晴!
上を見上げると雲が全くなくて、どこまでも突き抜ける青い空が続いていた。
新緑の匂いが気持ちよく、時々小鳥のさえずりも聞こえる。
church01.jpg
そんな風に周りを見ていたら、シスターが立ち止まった。
「はい、ここの前に腕を組んで待っていてくださいね。教会の鐘を合図に扉が開きますから」
100年以上経っているんだろうなぁっていう大きくて重みのある扉は、
長い風雪で黒光りしていた。
その扉の前に、トラップが右、わたしが左に立ち、二人腕を組む。
でもね。この時もトラップはこっち見なくて、腕だけ黙って突き出したんだよ。
もう〜〜〜。
でももう、しょうがないって溜息一つつくだけで、その腕に軽く手をかけた。
その間も、シスターは後ろの方でわたしのベールやトレーンを整えていて忙しそう。


その時、相変わらず前方の扉を見たままのトラップがふいに話しかけてきた。
「…なぁ」
でもその顔はさっきみたいなこわばった顔というよりは…真剣な顔。
「なぁに?」
「おれはさ、神さまとかにお願いしたり約束すんのって
好きじゃねえけどさ」
そこまで言うとトラップはようやくちゃんとこっちを向いて、視線をまっすぐくれた。

「……今日だけはちゃんと誓うからな」
言うだけ言って、みるみる赤くなる顔をまた前に向けるトラップを見ながら、
わたしは改めて確信した。

この人と結婚して幸せになれるって。

「うん!わたしも」
心の底から誓うからね。



教会の鐘が晴れ渡る空に響き、扉が少しずつ開いていく。
開いた隙間から一筋の光が入っていく。
わたしたちは、その光の先へ進みだす。



------------あなたは、その健やかなときも、病めるときも、喜びの時も、悲しみの時も、
富めるときも、貧しきときも、これを愛し、これを敬い、これを慰め、これを助け、
その命のかぎり、堅く節操を守ることを誓いますか?

------------はい、誓います

Fin


posted by うみ at 08:15| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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