2005年07月06日

依頼3

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。











[3]
「きた」
短くつぶやいたクローゼの声で、思わず入り口近くを見る。
金髪をきりっとポニーテールにまとめ上げ、眉もきりっとした
かわいいというよりはきれいな人。
にこにこ笑顔がトレードマークのクローゼからイメージする彼女とは
ちょっと……いや大分違うかも。

ジョゼットは挨拶するどころか、目線も合わせず空いている席に座った。
クローゼはそれを気にする風でもなく、相変わらず笑顔でわたしを紹介する。
「ジョゼット、こちら話をしてたレティシア。……これで信じてくれるかな」
そのセリフでようやくこっちを見るけど、迫力があって……ちょっと恐い。
というか、これってやっぱり睨まれてるって言うんだろうな。
「ふ〜ん。あなたが彼女?」
「……は、はい」
う〜ん、なんかいやな予感。
「あなたはクローゼのどこが好きなの?」
ぐっ……。
いきなりきた……。
とっさのことで詰まると、クローゼが助けてくれた。
「ジョゼット、初対面でいきなりそんなこと聞かれたってびっくりすると思うよ」
「そう? でも本当に好きだったら答えられると思うけど」
「彼女は……レティシアは人見知りするタイプなんだよ」
クローゼが必死に言ってくれるんだけど、彼女は反対に余裕しゃくしゃくという
感じでニッと笑う。
「へええ。じゃあ、そういう曖昧な質問はやめるわ。
クローゼの住んでる場所、言ってみて」
え?ええーーーーーー?
住んでるところ……。住んでるところ……。
無意味に繰り返してみたところで、知らないものは知らないし……。
クローゼが何か言いたげだけど、ジョゼットがすぐに制止する。
「あら。つきあってる人がどこに住んでるかぐらい当然知ってるわよね〜」
わたしは必死に頭を働かせて切り抜ける方法を考えた。
「あの……、まだ……つ、つきあって間もないので……外でしか会ってないんです」
「つきあって」という部分が言い慣れてないのがバレバレのような気がしないでもないけど。
これがわたしの限界。
お願いーー!これで納得してーーー!
必死の願いもむなしく、ジョゼットはわたしにトドメの一発を見舞った。
「あ、そ。じゃあ、これで最後。
本当につきあってるなら、わたしの前でキスして見せてごらんなさいよ」

は?は?はああああああああ?
わたしの頭の中はハテナがいっぱい。
ドウシテソンナコトニナルノ???

と、その時。
わたしの腕がふいに引っ張りあげられた。
「はい。そこまで」
聞き覚えのある声に振り向くと、やっぱりトラップ!
近くにちゃんといて、助けに来てくれたんだ!!
そう思うと同時に体の力が抜けたけど、彼は掴んでる力を緩めるどころか
さらに力を入れて引っ張りあげる。その勢いでわたしは椅子から立ち上がった。
その瞬間刺さるジョゼットとクローゼの視線。
そ、そ、そうだった。
ここは上手くトラップに立ち回ってもらうしかない。
「なんですか? あなたは!」
ジョゼットはもちろん、トラップの存在を知らないクローゼはかなりびっくりしている。
そりゃ、そうよね……。
後はトラップに合わせるしかないわたしは、
もうここまで来たら、どんなシチュエーションでも頑張ってついていくわよ!
と覚悟を決めて、トラップの次の言葉を待っていた。
ところが、トラップは
「おれ? こいつのエージェントだろ。あんた、自分でニセの彼女頼んどいて何言ってんの?」
などと言い出した。
クローゼは目が点。
その前に私も目が点。
何よ、その中途半端な嘘!
なんでなんでバラしちゃう訳ーーー?!
一人笑うのはジョゼット。
「やっぱりね〜。最初聞いた時から変だと思ってたのよ。やっぱり彼女なんていなんじゃない」
トラップは最高に不機嫌そうにジョゼットに目線をやる。
「あんたもな、この男がこんな芝居仕掛けてまで、あんたと別れたいっつーのに気づけ!」
その不機嫌そうな顔を今度はクローゼに向ける。
「お前もな、最初と言ってること違うじゃねえか。何が座ってるだけでいい、だ。
これ以上何かするんだったら、追加料金いただくからな」
顔を真っ赤にしたジョゼットとずーーっと目が点になりっぱなしのクローゼをそのままに、
トラップはわたしの腕を掴み、直接、外の通りにずんずんと進んでいった。



えーっと、えーーーーっと。
この状態ってやっぱりあれよね。
依頼されたお仕事、失敗したってことよね……。
未だ腕を掴まれ、通りを進みながらつぶやいた。
「どうしよう……。マリーナの信用つぶしちゃった……」
すると、ずっと黙っていたトラップが腕を離し、ふいに立ち止まった。
「だったら、あそこでおれが出て行かない方がよかったのかよ」
や、それは困る。
それは困るんだけど……。
「ま、ちょっとでもあの男とキスしたかったんだったら余計なお世話だろうけどよ」
「な、何言ってるの?! そんな訳ないでしょう?」
わたしが慌てて言うと、不機嫌そうな顔から一転いじわるそうな顔になった。
「ふーん。だったら、お礼は?」
悔しいーー!!
けど、助けてもらったのは本当だし。
わたしは素直にお礼を言った。
「……ありがとう。ちゃんとずっとついててくれてたんだね」
「いやーまぁ、大丈夫だろうから適当に遊んでくっかと思ってブラブラしてたら
冷や汗ダラダラのパステルちゃんが目に入ったからさあ。いや、タイミングよかったね」
適当に遊んでくっか……ですってーーー?!
くーーーーっ!!
……わたしのお礼を返せーーーー!!
ニヤニヤ笑ってるトラップの背中をポカっと叩いたけど、
またふと冷静になって思い出した。
「マリーナに謝らなきゃ……」
せっかく、わたしを信用してくれて依頼してくれたのに。
先払いとしてもらった報酬を返すことよりも、だんぜん、そっちの方が気になった。
今からマリーナの落胆した顔が目に見えるようで……、これで実際会ったらどんな顔して
会えばいいんだろ。
でも、トラップはまた不機嫌そうな顔になり
「いや、今回はあいつが悪い」
とだけ言って、再び歩き出した。

それについていこうとした矢先、後ろから声が聞こえた。
「パステルさーーーーん!」
振り向くと、クローゼが息せき切って走ってきて、わたし達のところまで来ると、
ひざに手をやり、はぁはぁと呼吸を整えている。
それを見て
「なんだよ。しゃべらないんなら、行くぞ」
って、トラップが言ったんだけど。
「ま、待ってください」
と、クローゼもようやくしゃべりだした。
「あの後…。ジョゼットに今回のことを一から正直に話しました。
そうしたら、彼女わかってくれました! 彼女もわたしに嘘つかれているのがいやで
意固地になっていた部分があったみたいで……。自分の気持ちを全部言ったら
“それならしょうがない”って。お二人のおかげです!ありがとうございます!!」
言い終わると深々と頭を下げた。
わたしも「いえ、こちらこそごめんなさい」と深々とお辞儀をする。
クローゼはまた頭を上げるとにっこり笑った。
「いえ、パステルは謝らないでください。自分の恋愛事に他人を
巻き込んでしまったわたしがいけなかったんですから」
そういうとクローゼはわたしの後ろにいるトラップを見た。
「それに……。そんな素敵な彼氏さんがいると知らずにこんなお仕事やってもらって
すみませんでした。止めなくてもさすがにキスはしませんけど、
きっと気が気じゃなかったですよね。本当にすみませんでした。
今回の報酬はちゃんとマリーナさんから受け取ってください! それでは!」
言い終わると、軽く手をあげ、くるりと背を向け雑踏の中に消えていった。


「よかったね〜。トラップ」
わたしが安心のため息と共に言うと、トラップはなぜか慌てていた。
「へ? よかった? ……あ、あぁ、あいつらのことな」
「あいつらのこと、って。他に何かいいことでもあるの?」
「……ねえけどさ」
へーんなトラップ。
あー、でも本当にうまくいってよかった!
これでマリーナにも報告できるし、お金もちょっとだけど手に入るし。
何より、クローゼも嘘をついたままより、やっぱりちゃんと本当の気持ち
言った方がいいもんね。
あ、でも嘘と言えば。
「ねえ、トラップ。なんであの時、もっといつもみたいに大掛かりな嘘つけなかったの?」
「……あ? なんだ、そりゃ。それじゃ、おれがいっつも平気な顔して大嘘ついてるみたいじゃん」
「自覚ないの?」
「おめえ、失礼なやつだな!」
あはははは。
ま、結果オーライってことで、いっか。

よし!じゃあ、このお金でルーミィや皆に目一杯おみやげ買って帰ろう!
そう考えると楽しくなってきて、うん、たまにはこういう依頼もいいんじゃない?
なんて思ってみたり。
喉元過ぎて熱さ忘れる……にしても早すぎかな。
でもきっと、次も何かあったらトラップが助けにきてくれそうな気がするし、ね。
ポカッとしようとするトラップの手を避けつつ、わたしはほくほく気分で市場の中心へ向かった。

Fin


posted by うみ at 09:57| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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