2005年09月05日

On your mark 2

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。











確かにカジノの裏手は見事な原っぱだった。
夜も更け、人気もない。
ただ、今日は満月だったから、明かりがなくてもそこそこ見通しはあった。
その見通せる範囲ぎりぎりのところに立っている一際大きい木のシルエットを
マリアーノが指した。
「あそこのさ、大きな木。あれに最初にタッチした奴が勝者だ。OK?」
「あぁ」
「君もさっきビール飲んでたけど、おれもその前にビール一杯飲んでるから
条件は同じだ」
「あぁ」
「でも」マリアーノは月明かりの下でにやりと笑った。
「パステルちゃんのことなんとも思ってないなら、
わざと負けてくれてもいいんだぜ」
「悪ぃけど、勝負事はいつでも本気でやるって決めてんだ」
おれは素っ気無く言って、首を少し回してみた。
うん、ほとんど酔いはまわってねぇ。

「じゃあ、いくよ。3つカウントダウンだ」
無言で頷く。
「3」
集中し、
「2」
木を見据える。
「1……0!」

その言葉と同時に飛び出した。
走り出すと心臓が思ったよりドクドク聞こえる。
くそ。やっぱアルコールのせいか。
通り過ぎる風の隣にはぴったりくっつくようなマリアーノの気配が伝わる。
勝た……せるかっ!
おれは無我夢中で土を蹴った。
一歩でも早く。
一歩でも前へ。
心臓のドクドクという音が自分からあふれ出そうになった瞬間に
目の前の木に手が触った。
そのまま木にもたれるようにして倒れこむ。
はぁはぁと荒い息が止まらない。

勝負は?

おれが酸欠気味の頭をのろりと上げると木の少し手前でマリアーノが
大の字になって寝転んでいた。

「はぁはぁ。ああーー、久々に全速力で走ったな。はぁっ。
うん、君の気持ちもよーーーくわかったし、楽しかったよ」
マリアーノは真上を見たまんま、なぜかとても上機嫌そうだった。
おれは少し落ち着いて、木にもたれて座る。
「はっ。だぁら、勝負事は本気でやるってだけだ」
「うん、わかってる、わかってる」
はぁ、とまた一息入れるとマリアーノはのろのろと立ち上がり、
おれに近寄った。
「トラップ。また、いつか勝負しよう」
立ち上がる時についたのか夜露で濡れた手を差し出した。
おれも夜露で濡れた手を拭くことなく、その手に掴まって立ち上がった。
結果的に握手をする形となる。
「次はくだらないモンかけるなよ」
「そうかな。一番真剣に勝負してくれるもの賭けたつもりだけど」
そう言うと握った手に力を加えてきた。
「……ってぇぇぇぇ!」
「負けたんだから、こんくらい許してよ。そんじゃ、元気で」
そう言って、ぱっと手を離すとどちらが勝ったのかわからないくらい
意気揚々と引き上げていった。
おれはと言うと……心臓の鼓動が収まらず、その後再び芝生の上で
寝転んでいた。

あいつ……なんでおれと勝負なんて言い出したんだろう。
考えながら見上げた空では、星がいつまでも瞬いていた。

[3]へ続く


posted by うみ at 08:27| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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