2005年10月19日

三度目は 2

※「フォーチュン・クエスト」((c)深沢美潮/迎夏生/メディアワークス/角川書店)の創作です。
トラパスですので、そのカップルはだめ、カップリング自体だめという方は
ご遠慮ください。











ようやく立ち上がれる程度におなかが落ち着きお店を出たわたし達は、クレイと別れてトラップの家へ向かった。そうそう、ノルもトラップのところへ泊めてもらえることになったんだ。さすがに家の中は人数ぎゅうぎゅうでみすず旅館と同じく馬小屋なんだけどね。
なので、熟睡したルーミィをおぶってもらって隣を歩く。
ふふっ。
トラップの家を出た時にはいなかったノルがいるのってなんか不思議。
相変わらず、会話はほとんどないんだけど、でもやっぱりノルがいると落ち着くなあ。

……なんて考えながら歩いていたら、前を歩くトラップとトラップの肩にのってるシロちゃんの会話が風に流れてかすかに聞こえてきた。

うーーーん。本当にかすかだから「好き」とか「願い事」とか「幸せ」とか
単語しか聞こえてこないんだけど、きっと居酒屋で話してくれなかったトラップのお願い事の話に違いない。
気になるーーーーー!!

わたしは駆け寄って後ろから割り込んだ。
「ねぇ! 今、お願い事の話してたでしょ」
「どわっ!!」
なんだか異常に驚いているトラップは放っておいて、シロちゃんに聞いてみた。
「トラップのお願い事ってなんだったの?」
「シロ!」
トラップが何か言いたそうにしてたけど、その口を塞いでシロちゃんを待つ。
「トラップあんちゃんはまだ決まってないみたいデシよ」
へ? そーなの?
トラップの口を塞いでた手も思わず緩む。
「ぶはぁっ! ったく、何するんだよ。ほらな。シロがああ言ってるんだ。
シロが嘘つくと思うか?」
ううん、思わない。と、わたしはぶるぶる頭を振る。
「だろ? でもよ。今、決めた」
「え?」
「もし、次にホワイトドラゴンに会ったら」
突然、真剣な眼差しになって見つめられる。
「おまえが……」
な、何? なんなの?
よくわからないけど、なんかどきどきしてくるじゃない。
とまどってるわたしの顔を見ると満足そうに満面の笑みを浮かべて、言った。

「毛糸のパンツ履かなくてもおなかが冷えねー体になるようお願いしてやるよ」

「なっ、なによそれー!」
どきどきした自分がばかみたい!
うぅー。トラップに毛糸のパンツ見られたのは一生の不覚かも。
大体なんで、トラップの願い事がわたしなの?!
「なんで皆みたいにパーティ全体のお願いじゃなくてわたしだけなの?」
そう聞いてみると、なぜかトラップは顔を赤くして怒り出した。
「なっ、別に他意はねーよ!」
怒るのはこっちのはずなのにー。変なの!
「他意って?」
わたしが素朴な疑問を聞くと、さらに不機嫌な顔をして
「知るか!」
って言ってずんずん歩調を速めて行ってしまった。

うーん、これはあれだな。
あのトラップは怒ってるんじゃなくて、照れてるんだ。
考えてみたら、毛糸のパンツは失礼とはいえ、ちゃんとわたしのこと心配した上でのお願い事だったもんね。きっと今はわたしが目の前にいたから、そう言ってくれたんだろうな。
ほんとトラップの優しさってわかりにくいんだから。

そう思って、シロちゃんをのせ肩をいからせながら歩いている後ろ姿を見ると、なんだかちょっと愛おしくみえてくる。
わたしも大分成長したなー。
トラップの気持ちがこんなにわかるようになったんだもん!

よし! トラップに気持ちちゃんと汲み取ったよってこと、伝えよう。
そう思ったわたしは、もう一度トラップに追いついて前にぐるっと回り、
いからせてる肩を下に落ち着かせるようにトラップの両腕を掴んだ。
「ね。そしたら、わたしは『トラップが幸せな人生送れますように』ってお願いにしようかな」
そう言うと、トラップは目をぱちくりしたまま、固まってしまった。
と、唐突だったかな…と思っていると、
「幸せっていうのは人によって感じ方が違うからできないお願いなんデシ。ごめんなさいデシ」
とシロちゃんに申し訳なさそうに言われてしまった。
シロちゃんが謝ることないよーって言おうと思ったら、いつもの状態に戻ったトラップに一瞬早く口を挟まれた。
「ほーら、なーにとっちらかったこと言ってんだよ」
その口ぶりにクリクリな目でキョトンとしたシロちゃんが口を開く。
「でもトラップあんちゃんもさっき同じようなお願い事言ってたデシよ。その時は……」
トラップってば、まだ話し途中のシロちゃんを肩からおなかに移動させてぎゅっと抱きこむと(っていうか、窒息しないかしら? あの状態……)、慌てて走り出した。
「あーーーーっと、おれ、ノルの寝床の状態を先に確認してくらぁ!じゃな」
って。

何がなんだか。
同じようなお願い事?
誰かの幸せな人生を願ったってことなのかな?
うわー! そんなのトラップらしくない! 絶対ない!
あ、でも意外と家族思いだから家族の幸せかな。

わたしには家族がいないから、そのお願いはもう無理だけど。
いつかそんなお願いをしたくなる素敵な相手が見つかるといいな。
消えていくトラップの背中を見ながら、そんなことを考えていると、後ろから追いついたノルと目が合った。
ノルはいつものように優しい目でにっこり笑ってくれた。
背中にはぐっすり寝ているルーミィの幸せそうな顔がちょっとだけ見える。
うん、でもこのパーティが楽しいからまだまだそういうのはいっか。
なんだかちょっと気持ちがほっこりして、わたしはまた歩き出した。

Fin


posted by うみ at 09:16| Comment(0) | TrackBack(0) | FQ創作 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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